
医療AIアプリ LocoStep のUX/UIリデザインプロジェクト。整形外科クリニック向けの歩行分析アプリで、理学療法士が患者の歩行動画を撮影し、AIで歩行機能を評価するiOSアプリです。保険償還の対象となり経営メリットを持つサービスでありながら、商談段階での停滞が続いていました。

リサーチを通じて、商談停滞の一因として結果画面における「臨床現場での実用性不足」と「医学的根拠不足による信頼性の欠如」が見えてきました。
そこで、結果画面のコンセプトをスコアベースから実測値 × 医学的エビデンスに転換し、さらに指標を拡充することで、全身を包括的に評価できる体験へ刷新しました。
このシフトにより、ビジネス成果と長期的な戦略の判断材料、信頼基盤を実現しました。


このサービスはもともと製薬企業との共同開発を経て事業継承されたサービスでした。KPI未達が続く中で、機能改善ではなく、プロダクトコンセプト自体の見直しが必要な段階 に入っていました。
PdMと営業停滞要因を整理した結果、プロダクト開発側で優先的に解決すべき課題として、以下の2点を仮説設定しました。
以前の結果画面は、歩行速度・左右差・ふらつき・リズムといった4指標のスコア表示が中心でした。シンプルで理解しやすい一方、病院での利用や導入判断の観点では、専門性・説明可能性・納得感が不足している 状態でした。
理学療法士にとって「なぜそのスコアになるのか」が説明しにくく、理学療法士の中でもスコアへの納得感がそれぞれ異なり、患者への説明や院内での導入検討に必要な信頼感を十分に支えられていませんでした。


見た目のわかりやすさではなく、現場で使われ、説明され、信頼される結果体験になっていないというビジネス課題がありました。
この案件の難しさは、医学的な信頼性を高めながらも、診断結果のように見せてはいけないという強い制約の中で、結果体験を再設計しなければならなかったことにありました。
既存のスコア表示はシンプルで、患者にも説明しやすい一方で、AIが「解釈済みのスコア」を出力していた点に課題がありました。スコアは理学療法士や医師にとっては算出過程や比較対象が見えにくく、判断材料として使いにくい構造になっていました。
一方で、実測値ベースの結果表示へ変更することによる以下のような課題も生まれます。
数値の良し悪しやレベル感が直感的に分かりにくい
理学療法士自ら解釈する思考プロセスが必要になる
スコア表示で満足していたユーザーにとっては、患者説明コストが増える可能性がある
情報量が増えるほど、結果体験が難解になるリスクがある
さらに、本プロダクトは医療機器クラスⅠに分類されるため、サービスとして「診断」を行うことはできません。 そのため、医学的なエビデンスや信頼性を補強しながらも、診断結果のような解釈を誘導する見せ方は避ける必要がありました。
このプロジェクトでは、以下の要件を満たす必要がありました。





結果体験を刷新するコンセプトの再定義を、PdMと連携して提案し仮説検証を推進していきました。
インタビュー、セグメンテーション、方向性の設定を通じて、プロダクトの価値そのものを見直しを図りました。

スコアベースから実測値ベースへの転換とトレードオフ、プロダクトの価値についてリサーチを推進しました。

さらに拡充すべき指標について、技術的実現性を考慮しながら検討していきました。

理学療法士や医師にとって納得感のあるエビデンスを、プロダクトの価値と照らし合わせながら精査していきました。
メインユーザーである理学療法士や決済者である医師に対して、計10回以上のインタビューを行い、コンセプト検証を実施しました。
PdMと協働して仮説を整理した上で、検証スピードを高めるために2つの取り組みを行いました。

Sales/PdM/Designerで再利用可能なインタビューシートを設計。誰がインタビューしても同じ深さの示唆が得られる状態を目指しました。

仮説検証のスピードを上げるため、生成AIで複数のプロトタイプを高速に作成。短いサイクルで検証を回し、コンセプトの受容性を確認しました。
理学療法士への6〜7件のインタビューとプロトタイプ検証を通じて、既存の結果体験における課題と、改善の方向性を整理しました。
特に理学療法士へのインタビューから、LocoStepに求める価値や利用方法に対する複数のセグメントへ解像度が高まってきました。


実測値ベースへの変更だけでなく、包括的に全身を評価できる指標の拡充と、利用シーンに応じて理解の深さを切り替えられる情報構造が必要だと判断しました。
中核的な設計課題は、
・詳細な数値による理学療法士の思考プロセスのサポート
・限られたリハビリ時間内での患者への説明のしやすさ
・信頼性の担保
をどう両立するかという点でした。
指標の拡充については、PdM・MLエンジニアと共に医学的エビデンスを調査し、結果体験の方向性を再設計しました。

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このプロセスでは、単に画面を整えるのではなく、どの情報をどの順番で見せれば、ユーザーが理解し、説明し、判断しやすくなるかを軸に、ユーザーインタビュー通じて見直しを行いました。

A案
B案
C案
動画と共に結果数値を確認するビュー
全ての結果数値を一度に確認するビュー
電子カルテに近づけたビュー
示唆・反応:
機能が多い、臨床場面において使いづらさあり
示唆・反応:
一覧性の低さあり、患者への説明しづらさにつながる
示唆・反応:
経験の浅い理学療法士にとって、解釈プロセスのコストが高い可能性
実測値を増やすことで専門性は高まる一方、情報量が多くなりすぎ、結果として理学療法士の解釈コストが上がる課題がありました。 そこから、平均値比較などの補助情報を追加し、さらにタブで情報の深さを切り替えられるようにすることで、ユーザーが場面に応じて結果を使い分けられる構成へ改善しました。



ユーザーニーズ、技術的制約、医学的的妥当性、実装可能性を整合させるため、複数のステークホルダーと緊密に協業。各ステークホルダーの視点を調整し、プロダクトの方向性を定義・推進しました。
リデザイン後、短期的な導入・商談改善と、長期的な信頼性資産の構築の両方につながる改善となりました。
このプロジェクトで得た学びは、「情報を増やす」ことが信頼の問題の解決にはならなかったという点です。
検討の初期段階では、指標を増やしたり、精度を上げる方向で考えていました。しかし、実際にブレイクスルーにつながったのは、問いを変えたタイミングでした。
「何を見せるか」ではなく、「医師はどんな順序で意思決定をしているか」
データそのものは変えていません。変えたのは、その周りの構造でした。
「どんなデータが存在するか」と「そのデータがどんな意思決定を支えるか」を切り分け、後者を軸に情報設計を行うことで、ユーザビリティを高め本質的な改善につなげられることを、本プロジェクトを通して学びました。
患者の疾患や診療領域において、活用方法や必要な指標がどう変化していくか、顧客獲得のために引き続きユーザー理解を深めていく必要があります。また、動画再生機能を組み合わせた結果画面全体の体験価値をさらに向上させていきたいと考えています。